保護室


 病院に依って隔離室、と言ったりする。医学用語辞典等には載っていないので、正式な医学用語では無いらしい。要は、鍵がかかっていて、余計な物は何も無い個室のこと。詳しくはまた書きたいと思うけれど、以前勤めていた病院のナースは「ゼル」と呼んでいたが、ドイツ語の「Zelle」を英語読みしてしまっているので、これは間違い。「ツェレ」と読むのが正しいらしい。精神病院を舞台にした北杜夫氏の芥川賞受賞小説「夜と霧の隅」の中では「独房」と表記され、「ツェレ」とルビがふってある。最近は保護室も出来るだけソフトな雰囲気になるように工夫されているが、「夜と霧の隅で」は第二次世界大戦中の精神病院を舞台にしているので、その時代の保護室はまさに「独房」だったのであろう。ちなみに語学的には「Zelle」は英語では「Cell」という単語と同じものらしく、「Cell」の語源が「小さく区切られた部屋」であることを考えると、「Zelle」という単語はまさに保護室に相応しい、と言えるのではないだろうか。



参考資料

夜と霧の隅で (新潮文庫)

夜と霧の隅で (新潮文庫)