精神科の火災


東京・板橋の病院で火災、患者死亡 容疑の患者の男逮捕
http://www.asahi.com/national/update/1015/TKY200610150077.html?ref=rss


 恐ろしい話だ、と思う。この記事によると、逮捕された男性患者はナースステーションからライターを持ち出したという。まずこの時点でまずい。更に、この男性患者は隔離室に入っていたらしいが、隔離室にライターを持ち込んでしまっている。入室前のボディチェックが甘かったのだろう。そして最も恐ろしいのが、放火した理由が。「近くの病室の入院患者が始終ドアをたたきうるさかったので、火を付ければやめると思った」というものであること。


 隔離室で1人患者が騒ぎ出し、周りの患者が反応して不穏化することは、珍しいことではない。そして、隔離室で患者が騒いでも、直ぐに静かにさせられるわけではない。或る程度は様子を見ることもあるし、騒げば要求が通ると思っている患者などの場合は敢えて無視する場合もある。周りの患者が反応し始めれば騒いでいる患者を沈静化させるよう処置をとるが、沈静化させようとして薬を使っても効かないこともある。今回の火災の場合、どのパターンだったのかは、わからない。


 病院などによると、男の病室は職員が開けたため逃げて無事だったが、死傷した患者の病室は鍵を開けるのが遅れたという、とネットの記事には書いてある。そもそも、精神科の病棟(特に閉鎖病棟)というのは、隔離・拘束をしている患者も多いし、そもそも病棟自体が非常口を含め施錠されている。窓も、人が出られない程度にしか開かない。加えて、精神科の患者さんは夜は殆どの人が睡眠薬を飲んで眠っているので、ちょっとしたことくらいでは起きないことが多い。だから、私も常々病院で火事や地震が起きたら、患者さんを助け切れないだろうな、とは思っていた。多分、病棟の鍵を開け、隔離室の鍵を開け、拘束を取って、……そこまですら、出来るだろうか、と思っていた。精神科は法律で他の科よりも看護師が少なくて構わないことになっている。だから、夜勤の人数なども少ない。60床くらいの閉鎖病棟で、夜勤の看護師が3人居れば多い方だと思う。そんな状況で火事や地震が起こったら……とても患者さんを助けきれない。


 まだニュースを見たばかりで頭の整理がついていないのだが、一つ言えるのは、他人事ではない、ということ。この事件には多くの問題が含まれている。きちんと考えなければいけない、と思う。